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紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 二 
 美耶子は思わず固く眼を閉じ、己れの中に浮かんだおぞましい光景を追い払おうとした。兼家と町小路の女のあられもない淫らな痴態―。あの女は兼家に求められるままに自在に乱れて派手な痴態を演じて見せるのだろうか。
 触れなば落ちん風情の女で、存在そのものが男を誘うような色香に満ちた女なのかもしれない。虫も殺さぬ風情でよよと兼家の胸に取り縋りながら、縋れば縋るほど男が自分に溺れてゆくのを存外に醒めた眼で見つめているのかもしれない。
―一体、どんな手練手管で殿を陥落させたのか―、したたかな女。
 そこまで考えた時、美耶子は愕然とした。
 なにゆえ、自分はそんな馬鹿げたことを考えるのだろう。
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