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紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 二 
 美耶子は町小路の女を見たこともない。ゆえに、彼(か)の女がいかなる者かさえ知らないのだ。その全く面識のない他人をここまで憎悪し、悪し様に罵るとは、これまでの美耶子ならば考えられないことである。
 それもすべては、美耶子が兼家を彼(か)の女に取られたと見苦しく嫉妬の焔を燃やしているせいなのだ。自分の中にこれほどまでに醜い感情が隠されていたことに、美耶子は大きな衝撃を受けていた。半年前、兼家と結ばれて以来、美耶子はそれまで想像もしたことがないような愛欲の渦に巻き込まれてしまった。 それは兼家という男を中心とした、限りなく大きな運命の渦だった。この果てなき渦の中で、これから美耶子はどうなってゆくのだろうか。
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