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紅蓮の月~ゆめや~
第2章 紅蓮の月 一
つい数日ほども前のことになる。
帰蝶が城の廊下を歩いていると、年若い侍女たちがひそひそと噂話をしていた。
―お館様は真に吉乃様に夢中でいらっしゃるわねえ。そう申せば、吉乃様にはご懐妊の兆候がおありになったとか。
―まぁ、それはおめでたいこと。さりながら、生駒のお方様(吉乃は生駒氏の娘であったことから、このように呼ばれた)にお子様がおできになると、奥方様のお立場は益々苦しいものになられますね。それでなくとも、お館様は奥方様を近付けようともなさらないのだもの。
―でも、私ならば、たとえ織田のお殿様とはいえ、こちらのお館様のご寵愛を頂くなんてまっぴらご免だわ。
帰蝶が城の廊下を歩いていると、年若い侍女たちがひそひそと噂話をしていた。
―お館様は真に吉乃様に夢中でいらっしゃるわねえ。そう申せば、吉乃様にはご懐妊の兆候がおありになったとか。
―まぁ、それはおめでたいこと。さりながら、生駒のお方様(吉乃は生駒氏の娘であったことから、このように呼ばれた)にお子様がおできになると、奥方様のお立場は益々苦しいものになられますね。それでなくとも、お館様は奥方様を近付けようともなさらないのだもの。
―でも、私ならば、たとえ織田のお殿様とはいえ、こちらのお館様のご寵愛を頂くなんてまっぴらご免だわ。