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紅蓮の月~ゆめや~
第12章 第三話 【流星】 エピローグ
 いずれにしろ、今の美都にはまだ遠い、想像するのも難しい境地だ。
 美都は肩に着せかけられていた袿を肩から滑らせた。しっくりと肌に馴染んだような感触に、もう少し触れていたいと思ったけれど、きちんと畳んで「ゆめや」の女主人に返した。
「色々、ありがとうございました」
 心を込めて礼を言い頭を下げる。
―帰ったら、もう一度良人と話し合ってみます。やり直すことができるのならば、やり直してみようと思います。
 その後に続く台詞は呑み込んだ。
 眼前の美しい女主人が二十年前にこの「ゆめや」にいた女性と同じ人物であったかどうか、そのことは最早美都にとって、どうでも良いことのように思われた。
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