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紅蓮の月~ゆめや~
第13章 最終話 【薄花桜】 プロローグ
彼女は思わず見とれた。
彼女の背後で柱時計が刻をきざんでいる。狭い店の四方にはぐるりと作りつけの棚があり、きちんと畳まれた着物が幾重にも積み上げられて収まっている。その間には朱塗りの衣桁に掛かった幾つかの着物が眼にも鮮やかな色彩を見せて並んでいた。
かつては賑わいを見せたこの小さな町外れの商店街も今ではすっかりさびれてしまった。店を開けているのは、この「ゆめや」くらいのものだ。気の遠くなるような果てしない時をここでやり過ごし、彼女は多くの人々にめぐり逢った。
彼女は柱時計が静かに刻をきざむ音を聞きながら、瞬きもせずに雪を見ていた。ふいに、
天から降りてくる白い花びらがほのかに薄紅色を帯びていることに気づく。はらはらと散り零れ、風に舞う桜貝のような花びらたち―、彼女は眼を見開き、食い入るように花びらにも似た雪を眺めた。
彼女の背後で柱時計が刻をきざんでいる。狭い店の四方にはぐるりと作りつけの棚があり、きちんと畳まれた着物が幾重にも積み上げられて収まっている。その間には朱塗りの衣桁に掛かった幾つかの着物が眼にも鮮やかな色彩を見せて並んでいた。
かつては賑わいを見せたこの小さな町外れの商店街も今ではすっかりさびれてしまった。店を開けているのは、この「ゆめや」くらいのものだ。気の遠くなるような果てしない時をここでやり過ごし、彼女は多くの人々にめぐり逢った。
彼女は柱時計が静かに刻をきざむ音を聞きながら、瞬きもせずに雪を見ていた。ふいに、
天から降りてくる白い花びらがほのかに薄紅色を帯びていることに気づく。はらはらと散り零れ、風に舞う桜貝のような花びらたち―、彼女は眼を見開き、食い入るように花びらにも似た雪を眺めた。