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紅蓮の月~ゆめや~
第13章 最終話 【薄花桜】 プロローグ
彼女はこの小さな古着屋「ゆめや」の主(あるじ)である。住人といえばその大部分が老人だというこの小さな町の外れで、細々と店を営んでいる。訪れる客とて滅多にはいないこの店の中で、彼女はひっそりと刻(とき)を過ごしている。
もう、どれほどの刻をここで迎えたであろうか。彼女は、これまでの気の遠くなるような際限もない年月に想いを馳せた。最愛の良人を失ってから、季節は幾度もめぐった。
時代はうつろい、この国はかつて彼女が知っていた古き良きものを急速に失いつつある。
窓の外では、夜を迎えて、雪が止むどころかますます激しさを増しているようだ。降りしきる雪が店の前の外灯に照らし出されている。時折風が吹くと、雪が舞い流される。その光景は、春に散る桜の花びらにも似ている。風が吹く度に雪はまるで風と戯れる花びらのように舞い踊る。その様が灯りに照らし出されるのは夢のように美しく幻想的であった。
もう、どれほどの刻をここで迎えたであろうか。彼女は、これまでの気の遠くなるような際限もない年月に想いを馳せた。最愛の良人を失ってから、季節は幾度もめぐった。
時代はうつろい、この国はかつて彼女が知っていた古き良きものを急速に失いつつある。
窓の外では、夜を迎えて、雪が止むどころかますます激しさを増しているようだ。降りしきる雪が店の前の外灯に照らし出されている。時折風が吹くと、雪が舞い流される。その光景は、春に散る桜の花びらにも似ている。風が吹く度に雪はまるで風と戯れる花びらのように舞い踊る。その様が灯りに照らし出されるのは夢のように美しく幻想的であった。