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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
―薄花桜―
一
今日も朝から爽やかな蒼空がひろがっている。この分では日中はまた初夏めいた陽気になるに相違ない。今年の冬は京の都は殊に雪が多くて厳しいものだったけれど、弥生も末になり一挙に春めいてきた。あれほどの寒さだったにも拘わらず、殆ど例年どおりに桜も咲き、今は卯月の初めだというのに、昼間はもううっすらと汗ばむほどの陽気だ。
その恵みはありがたいけれど、全くお天道様はいつだって気紛れだと小文(こふみ)は思わずにはおれない。この冬の異様なほどの厳しさに、小文の良人の治助(じすけ)の病はいっとう悪化してしまった。医者からも、もしやこの冬が越せぬかもしれないとひそかに言い渡され、小文は覚悟していたほどなのだ。
一
今日も朝から爽やかな蒼空がひろがっている。この分では日中はまた初夏めいた陽気になるに相違ない。今年の冬は京の都は殊に雪が多くて厳しいものだったけれど、弥生も末になり一挙に春めいてきた。あれほどの寒さだったにも拘わらず、殆ど例年どおりに桜も咲き、今は卯月の初めだというのに、昼間はもううっすらと汗ばむほどの陽気だ。
その恵みはありがたいけれど、全くお天道様はいつだって気紛れだと小文(こふみ)は思わずにはおれない。この冬の異様なほどの厳しさに、小文の良人の治助(じすけ)の病はいっとう悪化してしまった。医者からも、もしやこの冬が越せぬかもしれないとひそかに言い渡され、小文は覚悟していたほどなのだ。