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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
 その誠実さと小文の商いの才覚とで「ゆめや」は順調な滑り出しを見せた。店を開いて一年が過ぎる頃には洛中に店を構えることができるほどに繁盛しており、夫婦は京の外れから賑やかな中心部に移った。そこでひと回り大きな店舗を出し、新たに「ゆめや」の看板を上げた。
 小文を突然の不幸が襲ったのは、新しい場所に移って一年ほど後のことである。その頃、「ゆめや」の経営状態は少しずつではあるけれど、悪化していた。あまたの人々で賑わう洛中に引っ越してきたことが裏目に出たのだ。中心部には何もわざわざ古着を買わずとも、新しい着物を得ることができる裕福な階層の人々が多く住んでいる。中心部に店を出せば、顧客がもっと増えるのではないか。そう目論んだ小文の読みが外れたのだ。
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