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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
落胆する小文に、治助は自ら古着を持って行商に出ると言い出した。
―俺はこれまで小文に何もかもさせてばかりで、何もしてやれなかった。せめて、何か役に立つことがしてえんだ。「ゆめや」は小文と俺の店じゃねえか。なに、俺にだって、古着を売り歩くことぐらいはできるぜ。
治助は明るく言い、翌日から大きな荷を背負い、出かけていった。早朝から陽が落ちるまで都中を足を棒にして歩いた。治助は元々口べたで客を相手に愛想の一つも言えない男だ。古着は殆ど売れず、治助は疲れた顔で帰ってくることが多かった。それでも、治助は毎日、古着の積め込まれた籠を背負って出かけた。それは雨の日も雪の日も―酷暑の夏の日も続いた。
―俺はこれまで小文に何もかもさせてばかりで、何もしてやれなかった。せめて、何か役に立つことがしてえんだ。「ゆめや」は小文と俺の店じゃねえか。なに、俺にだって、古着を売り歩くことぐらいはできるぜ。
治助は明るく言い、翌日から大きな荷を背負い、出かけていった。早朝から陽が落ちるまで都中を足を棒にして歩いた。治助は元々口べたで客を相手に愛想の一つも言えない男だ。古着は殆ど売れず、治助は疲れた顔で帰ってくることが多かった。それでも、治助は毎日、古着の積め込まれた籠を背負って出かけた。それは雨の日も雪の日も―酷暑の夏の日も続いた。