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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
 桜が散り春が終われば、まもなく京の都は蒸し暑い酷暑の夏を迎える。盆地の京都は冬の寒さは底冷えするほど厳しく、夏は釜の中で煮られるように暑い。弱り切った治助の身体が厳しい夏を越すのは難しいであろうことは小文にも判った。
 治助に良い薬を呑ませるためにも頑張って少しでも多くの銭を稼がねばならいと、小文は頑張って商いにいっそう打ち込んでいる。そのお陰で、巻き直しとまではゆかないが、経営の悪化には歯止めがかかり、少しずつではあるけれど新しい客もつき始めていた。
 たった今も連れだった母娘(おやこ)が来て、芝居見物用の晴れ着にするのだと言って、古着を買っていった。小間物屋の内儀とその娘だという。仲睦まじげな母娘の姿に、一瞬実家の母親の姿を思い出し、小文は目頭が熱くなった。
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