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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
自分がもう少し治助の健康状態に気を配っていれば、治助の病はこんなにも悪化することはなかったろう。毎日疲れた顔で帰ってくる治助は顔色も冴えず、殊にその頃は食もあまり進まないようだった。小文はそれを単なる疲労だと思い込んでいた。もっと早くに医者に診せて養生させていれば、最悪の状態だけは避けることができたかもしれない。最悪の状態―、それは考えたくもないけれど、治助の死である。
既に医者からは治助の生命は長くて数ヶ月と告げられている。今年の春は迎えられないだろうとまで一時は言われ、小文は物影で一人号泣したのだ。このところの陽気で何とか
持ち直したものの、それでもこの夏が峠だと言われた。
既に医者からは治助の生命は長くて数ヶ月と告げられている。今年の春は迎えられないだろうとまで一時は言われ、小文は物影で一人号泣したのだ。このところの陽気で何とか
持ち直したものの、それでもこの夏が峠だと言われた。