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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
 自ら傷つきながらも、すべての罪深き者たちを許すと仰せになられたでうす様。愛弟子に裏切られ磔(はりつけ)になりながら、その者を許されたでうす様。だからこそ、聖堂の中で十字架を背負われたでうす様はあんなにも優しげな顔をなさっておいでなのだ。
 小文は哀しげでいながら慈愛に満ちた基督(キリスト)の像を感慨深く眺め上げるのだった。
 家や家族との絆を断ち、すべてのものを棄ててきた小文にとって、治助はたった一人の大切な家族だ。治助がいるからこそ、小文は「ゆめや」を続けてゆこうと頑張れるのだ。治助が自分の傍から、この世からいなくなるなぞ考えられない。
 治助が死んだらと想像するだけで、怖くて大声で叫びたくなってしまうほどの恐怖と淋しさに襲われる。そんな時、天主堂に行ってでうす様のお顔を見れば、不思議と少しでも心が落ち着くのだ。
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