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紅蓮の月~ゆめや~
第2章 紅蓮の月 一
「紫陽花がほれ、あのように月明かりに輝いて。丁度、殿にもお見せしたいと思うておったところにございます。私の想いが通じたのでございますね」
 微笑んで言うと、信長は愉快そうに笑った。
「フン、抜かしおるわ。想いが通じたとは、ようも言うたの。流石はマムシの娘だ。並の女とは申すことが違う」
 信長は声を上げて笑う。実は帰蝶が信長と話らしい話をするのはこれが初めてなのだが、この男にはどうやら常識は通じないらしい。こうして間近に話していると、本当に馬鹿なのではないかと思いたくなってしまう。が、それが彼特有の芝居なのだろう。
 だが、帰蝶も負けてはいない。婉然と微笑むと、余裕で返した。
「お褒め頂き、嬉しうございます」
 信長はそんな帰蝶をチラリと横眼で一瞥すると、無頓着に言った。
「そなたの舞はなかなかだと聞いている。ひとさし舞うてはくれぬか」
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