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紅蓮の月~ゆめや~
第16章 最終話 【薄花桜】 エピローグ 
エピローグ

 彼女は長い回想から解き放たれ、小さな吐息をついた。静まり返った店の中は相変わらず雪明かりに淡く照らされている。
 その時、柱時計が鳴り出した。わずかに愕いて背後を振り返ると、時計の針は丁度午前零時を指していた。
 彼女は、ふと窓の外、白い雪の幕の向こう側に人影を見つけて愕然とした。
 懐かしい笑顔。何より大切なひとがそこにいた。病で亡くなる間際ではなく、元気そのものだった頃の良人の顔だ。
 彼女の白い頬を涙がひとすじつたい落ちる。
「お前さん―」
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