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紅蓮の月~ゆめや~
第3章 紅蓮の月 二
 突如として強い力で抱き寄せられ、帰蝶は身を強ばらせた。伽をするようにと言われたときから覚悟はしていたつもりだった。が、あまりに突然のことで、帰蝶の気持ちがこの事態を受け容れることができなかった。
「どうした、マムシの親父殿に儂を閨で骨抜きにせよとよくよく言い含められてきたのではないか」
 いつもながらのからかいを含んだ声音に、帰蝶は小さく首を振った。
「そのようなことは存じませぬ」
「そうか」
 信長は本気で取り合う気もさらさらないらしい。軽く相槌を打っただけで、帰蝶の華奢な身体を抱きしめながら、寝衣の帯を解き始めた。刹那、帰蝶は自分でも思わぬ行動に出ていた。両手で信長の身体を力一杯向こうへ押しやっていたのだ。
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