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紅蓮の月~ゆめや~
第3章 紅蓮の月 二
 ここで信長の気を逸らしてはならない。帰蝶は頭を深々と下げたまま、もう一度丁重に謝った。
 閨の中に沈黙が降りる。帰蝶は頭を下げたまま、息をつめて信長の出方を待った。
 短い沈黙が続いた後、信長の吐息が聞こえた。
「良い。気にするな」
 ややあって、信長がフッと笑う。
「―それにしても、今夜の帰蝶はしおらしいな。先日とはまるで別人のようだ。確かにそのような女は儂の好みではあるが、そなたに限っては別じゃ。そなたが殊勝にふるまうなど致せば、赤い雪が降るやもしれぬわ」
 その台詞に、帰蝶は思わず顔を上げていた。
「赤い雪なぞと、それはあまりな仰せではございませぬか。私だって、これでも女子にございますれば」
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