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紅蓮の月~ゆめや~
第4章 紅蓮の月 エピローグ
実幸は自分が着ていた小袖を脱ぐと、丁寧に畳んで、女主人に返した。
帰蝶が好んでよく着ていた小袖、信長も美しいと誉めてくれた―。この小袖は帰蝶の幸せな想いを憶えている。だから、実幸に束の間の「夢」を見せた。
実幸はガラス戸を開けた。女主人に頭を下げて出ていこうとしたその時、背後で鈴を転がすような声が聞こえた。
「日々の暮らしに倦んだら、また、ここにおいでなさいませ。この店はいつでも、どなたでも来ようと思ったときにその方の眼に止まります。その方が望めば、扉はいつでも開かれるのです。―ここは『ゆめや』でございますから」
( 第一話 紅蓮の月 了)
帰蝶が好んでよく着ていた小袖、信長も美しいと誉めてくれた―。この小袖は帰蝶の幸せな想いを憶えている。だから、実幸に束の間の「夢」を見せた。
実幸はガラス戸を開けた。女主人に頭を下げて出ていこうとしたその時、背後で鈴を転がすような声が聞こえた。
「日々の暮らしに倦んだら、また、ここにおいでなさいませ。この店はいつでも、どなたでも来ようと思ったときにその方の眼に止まります。その方が望めば、扉はいつでも開かれるのです。―ここは『ゆめや』でございますから」
( 第一話 紅蓮の月 了)