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紅蓮の月~ゆめや~
第4章 紅蓮の月 エピローグ
翌朝になった。
その日、お彩は昼過ぎに客足が途絶えた時間、再び二階の喜六郎の居間に呼ばれた。部屋には先夜と同じように床の間を背にして喜六郎、その傍らに小巻が並んでいる。
「お彩ちゃん、済まねえ。実は―」
喜六郎が苦渋に満ちた表情で話し始めた瞬間、小巻がわっとその場に泣き伏した。
「ごめんなさい、こんなに大事(おおごと)になるとは思わなかったのよ。私、あなたが羨ましかったの。あなたは〝花がすみ〟のお客に人気があるだけじゃなくて、うちのおとっつぁんまでがあなたのことを娘のように可愛がってるし、手放しで褒めるわ。それに引きかえ、私はどんどんお腹は大きくなって身動きするのさえ億劫になるし、毎日家の中に引きこもってばかりで退屈で死にそう。あなたのことは前から虫が好かない嫌な女だと思ってたから、つい、あんなことをしちまったのよ。あなたがこのせいで、うちの店から出ていってくれたらって思っていたわ」
その日、お彩は昼過ぎに客足が途絶えた時間、再び二階の喜六郎の居間に呼ばれた。部屋には先夜と同じように床の間を背にして喜六郎、その傍らに小巻が並んでいる。
「お彩ちゃん、済まねえ。実は―」
喜六郎が苦渋に満ちた表情で話し始めた瞬間、小巻がわっとその場に泣き伏した。
「ごめんなさい、こんなに大事(おおごと)になるとは思わなかったのよ。私、あなたが羨ましかったの。あなたは〝花がすみ〟のお客に人気があるだけじゃなくて、うちのおとっつぁんまでがあなたのことを娘のように可愛がってるし、手放しで褒めるわ。それに引きかえ、私はどんどんお腹は大きくなって身動きするのさえ億劫になるし、毎日家の中に引きこもってばかりで退屈で死にそう。あなたのことは前から虫が好かない嫌な女だと思ってたから、つい、あんなことをしちまったのよ。あなたがこのせいで、うちの店から出ていってくれたらって思っていたわ」