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紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
「選んだ衣装のかつての持ち主が生きていた時代―」
花凛は女主人の言葉をそのままなぞりながら、茫然とした。つまり、現代から、古着の元々の持ち主が生きていた過去へと時を遡ることができるということなのだろう。映画や小説ではあるまいに、そんな現実離れしたことが果たして現実に起こり得るのだろうか。自分が子どもだから、からかわれているのかとも思ったが、眼前の女主人は至って真面目な表情である。ならば、やはり、この美しい女性は気の毒に気が狂っているのだろうかとも思った。
そんな風に思うと、雨の中、ひっそりと佇む小さな古い店の中でこの美しい人と二人きりでいるのが急に怖くなった。派手やかな美人にも拘わらず、影のようにひっそりとまるで存在感がないのも不気味だ。考えてみれば、この小さな町で生まれ育って十七年になるけれど、花凛は「ゆめや」なるこの店のことをまるで知らなかった。
花凛は女主人の言葉をそのままなぞりながら、茫然とした。つまり、現代から、古着の元々の持ち主が生きていた過去へと時を遡ることができるということなのだろう。映画や小説ではあるまいに、そんな現実離れしたことが果たして現実に起こり得るのだろうか。自分が子どもだから、からかわれているのかとも思ったが、眼前の女主人は至って真面目な表情である。ならば、やはり、この美しい女性は気の毒に気が狂っているのだろうかとも思った。
そんな風に思うと、雨の中、ひっそりと佇む小さな古い店の中でこの美しい人と二人きりでいるのが急に怖くなった。派手やかな美人にも拘わらず、影のようにひっそりとまるで存在感がないのも不気味だ。考えてみれば、この小さな町で生まれ育って十七年になるけれど、花凛は「ゆめや」なるこの店のことをまるで知らなかった。