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紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 一
 しかし、事ここに至って、頼朝はこの天性の戦上手の弟が目障りになってきた。義経を良からず思う頼朝の家臣梶原影時の讒言もあり、義経は頼朝から反逆者として追われる身となっていた。
 頼朝に疎まれた義経は厳しい鎌倉方の追捕の手を逃れ、はるばる奥州平泉まで逃げてきた。頼朝は後白河法皇から義経追討の院宣まで得ている。かつて、あれほど義経を頼りとされた法皇も最早何の当てにもならない。もっとも、法皇は頼朝からも「日本一の大天狗」と評されたように、上辺では義経を頼りにするようなことを言っておきながら、真実は頼朝への盾として利用したにすぎない。が、一途で純粋な義経は法皇の本心を見抜けないどころか、いまだに法皇をただ頼朝に脅されただけだと信じている。
 法皇から義経追討の院宣が出ている以上、義経はつまりは「天下の大罪人」であった。最早、どこにも逃げ場所はない。そんな義経が頼れる唯一の場所といえば、藤原秀衡の許しかなかった。
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