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紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 一
凛子は、淡い燭台に照らされた義経の端整な横顔を見つめた。義経は夜具の上に腹這いになった姿勢で思案に沈んでいる。閨の中はただ沈黙だけに満たされていた。降りしきる雨の音がその静けさをいやが上にも増している。
「―殿。何をお考えになられていますの?」
凛子は訊ねずにはおれなかった。凛子の純白の寝衣は襟元がしどけなく乱れている。それは、たった今、二人の上を通り過ぎた嵐の名残をとどめるものに相違なかった。だが、義経はつい今し方まで凛子を狂おしいほどに求めたことなど知らぬげに遠い眼で何かを想っている。
平泉に戻ってきた義経はいつもこんな風な昏(くら)い眼をしていた。かつての若鷹のような輝きや時に破天荒なほどの明るさや無邪気はことごとく失われてている。
「殿?」
凛子が焦れたように重ねて訊くと、義経は無言で凛子を見た。その双眸を見て、凛子は何も言えなくなった。あまりにも悲痛な光がその眼に宿っていたからだ。
「―殿。何をお考えになられていますの?」
凛子は訊ねずにはおれなかった。凛子の純白の寝衣は襟元がしどけなく乱れている。それは、たった今、二人の上を通り過ぎた嵐の名残をとどめるものに相違なかった。だが、義経はつい今し方まで凛子を狂おしいほどに求めたことなど知らぬげに遠い眼で何かを想っている。
平泉に戻ってきた義経はいつもこんな風な昏(くら)い眼をしていた。かつての若鷹のような輝きや時に破天荒なほどの明るさや無邪気はことごとく失われてている。
「殿?」
凛子が焦れたように重ねて訊くと、義経は無言で凛子を見た。その双眸を見て、凛子は何も言えなくなった。あまりにも悲痛な光がその眼に宿っていたからだ。