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紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 一
たとえ、その気持ちが肉親の情に飢えているからこそのものだとしても、凛子はそれほどまでに義経の心を捉えて離さぬ頼朝という男を憎んだ。凛子の頼朝への感情は、かつて義経が愛した静に対するそれよりもよほど複雑なものであった。義経の心に巣喰う闇を埋めることができるのは、多分義兄頼朝一人なのだろうということも凛子は判っている。相手が同じ女なら、凛子も同じ立場で義経の愛を競うことができるけれど、頼朝は義経の血を分けた兄なのだ。たとえ凛子がいかほど義経を愛そうとも、血のつながりを持つことはできない。
凛子がどれだけ義経を慕い大切に思っていても、頼朝にだけはけして勝つことはできないのであった。身体の結びつきよりもなお強いもの―、それが見内への想いであった。たとえどれほど凛子が義経との間に信頼関係を築こうとも、義経の心の空白が満たされることはない。
凛子がどれだけ義経を慕い大切に思っていても、頼朝にだけはけして勝つことはできないのであった。身体の結びつきよりもなお強いもの―、それが見内への想いであった。たとえどれほど凛子が義経との間に信頼関係を築こうとも、義経の心の空白が満たされることはない。