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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
 
 するとその時、部屋の外から正成の声が響いてくる。

「秀俊様、よろしいでしょうか」

 あきは慌てて日記を棚の奥にしまい込むと、入るよう返事する。現れた正成は、冷静沈着な顔をして文を差し出した。

「隆景殿の使者から、文が届きました。隆景殿が、伏見に向かわれたようです」

「お父様が? でも、文が……」

 渡された文は、いつもと違い分厚くない。軽く目を通してみれば、書いたのも本人ではなく祐筆のようだった。

「病……?」

 そこには、病にかかって出立が遅れてしまったが、快方に向かったので今から伏見に向かう、と書かれていた。

「お父様が来られなかったのは、お忙しいためではなかったのですか」

「おそらくは、両方といった所でしょう。秀俊様を養子とした事で、隆景殿はさらに豊臣の重臣となりました。とても見えませんが、あれであの方は年です。忙しさが病を引き起こしても、無理はありません」

 もし筆を取る体力がなくて祐筆に任せたのだとしたら、それは重い病だ。無理をおして伏見へ来るのではないかと思えば、あきは手放しで再会を喜べなかった。
 
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