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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
「心配ならば、隆景殿が到着した後親孝行すれば良いでしょう。肩を揉んでやるくらいでも、向こうは嬉しく思うのではないですか」
「正成様……そうですね、ただ心配するだけでは、何もしないのと一緒ですもんね」
「親は子が身を案じてくれるだけで、充分に嬉しいものだと思いますがね」
「親とは、そういうものなのですか?」
「一応私も、父親の立場は経験しておりますから。もっとも、私の子はまだ小さいですが」
「子ども……」
山口や頼勝と比べれば、正成はまだ若い。詳しく聞いた事はないが、おそらく子はまだ乳飲み子でもおかしくはない年のはずだ。
ふいに頭を過ぎるのは、秀吉とその子ども。親と子というものが何なのか、あきにはもう一つ分からなかった。
「親は、子が可愛いあまりに、他が何も見えなくなるものなのでしょうか……」
呟きにも近いあきの問いに、正成も同じ人物を頭に思い描いたのだろう。顎に手を当て、考え込んでしまった。
「……どうでしょうね。しかし、親という生き物は、子のためなら鬼にでもなれる。それは否定できないでしょう」