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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
頼勝の気性が良いのは、あきも充分に知っている。それを見守る正成も、また性根は優しい人間である。二人の部下は、あきにとって心強い味方であった。
(もし秀俊という武士が生きていたら、この人達とどう関わって生きたんだろう)
日記は、秀吉に見捨てられ悲しみに暮れたところで終わっている。おそらく二人は、出立と同時に付けられた家臣なのだろう。
京を離れてから、死ぬその日まで、秀俊が何を思っていたのか。本音を知る者は、おそらくいない。だがその短い期間に、望んでいた希望が訪れていた事を、あきはひそかに祈った。
「それと、これが一番大事な用なのですが……治部殿に、身代わりだと見抜かれたのは本当ですか?」
「は、はい……本物の秀俊様は目の下にほくろがあるらしく、それを指摘されました」
「ほくろ? そんなもの、あったでしょうか……」
最期に行動を共にしていた正成をはじめ、一番の責任者であった山口ですら気付いていなかった小さな相違だ。訝しがる正成を見て、あきはふと気付いた。
(石田様……秀俊とは仲良くないと言っていたのに、ほくろに気付くなんて。相当注意深い方なのね)