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第5章 石田三成という男

　
「ほくろがあるというなら、適当に書き足してしまえばいいでしょう。問題は、石田殿がどこまで見逃してくれるかです」

「でも、秀俊様がいないと広めて、石田様が得する事はないのでは？　石田様は豊臣の重臣で、まさか太平が乱れる事を望んではいないでしょう。ならば……」

「そうならないのが、石田という男です。あれは頭でっかちで、機転というものを知りません。悪いものは悪いのだと、後先考えず迫る可能性もあります」

　どうやら正成も石田三成に良い印象がないようで、語る表情は冷たかった。

「しかし、秀俊様を連れてくる事は……」

「もちろん、分かっています。隆景殿がいらしたら、相談した方がいいと思ったのです。あの方なら、私達では思い付かない奇策を編み出すかもしれません」

「手紙で、すでに石田様の話は通しています。お力を、貸していただけるといいのですが」

　正成に頷きながらも、あきは悩む。確かに正成の言う通り、三成には頑固な一面がある。だが、ひねくれた言い方をしながらも、あきのために時間を割いてくれる三成が、後先考えず真実を言いふらすとは思えなかった。