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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
「ともあれ、あまり石田を信用してはなりません。くれぐれも用心を」
「は、はい……」
太閤も、秀次も、三成も。気を許してはならない相手ばかりで、あきは気が滅入ってしまう。豊臣という伏魔殿もそうだが、隆景はあきに身内にも用心しろと教えている。正成達が裏切るとは思っていないが、四方を疑いの眼差しで見渡すのは疲れるものだった。
(けれどお父様は、自分で物事を判断できるようになれと仰られていたわ。見極めないと)
あきは首を振り、落ち込んだ気分を払う。身に付けなければならない作法や知識は山ほどある。立ち止まっている時間はなかった。
それから数日経ち、隆景が伏見へ到着したという知らせが入る。久々に顔を合わせられると思えば、あきの胸はうるさいくらいに跳ねた。
少しでも男らしく見えるよう、裃で待ち構える。そしてしばらくすれば、足音が遠くから響いてきた。
あきは待ちきれず、立ち上がると自分から襖を開く。
「お父様!」
しかし、目の前にいたのは小柄で、女顔の男。それは最も信頼できる隆景ではなく、警戒すべき三成であった。