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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
「い、石田様……失礼しました」
「……先日も話したと思うが、官位はお前の方が上だ。影武者なら、徹底しろ」
三成はなぜか侍女の着物を手にしていて、それをあきに渡す。
「石田殿、あの……?」
「秀俊の人となりを知りたいと懇願したのはそちらだろう。暇が出来た、今なら付き合ってやらん事もない」
「え……」
隆景との再会を目の前にして、出掛けるのは気が乗らない。しかし確かに、三成へ無理な願いを頼んだのもあき自身である。むげに断れば、三成と小早川家の関係がどうなるか。答えは、一つしかなかった。
「わ、分かりました。しかし、この着物はなんですか? 秀俊様のもの……ではないですよね」
鮮やかな山吹色の着物は、どう見ても女物である。秀俊に女装趣味でもない限り、今回の件とは関係のない代物だった。
「外へ出るから、それへ着替えろ。俺とお前が必要以上に懇意だと広まれば、後に面倒になる。女装していれば、誰もお前が金吾だとは気付かないだろう」
天下人に仕える侍女の着物だけあって、それは美しいだけでない。作りもしっかりしていて、動くにはちょうどよさそうだった。