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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
頼勝が豪快に笑い、山口の調子を乱す。見かねた正成はさりげなく間に入り、話を進めた。
「それで、山口殿。隆景様はなんと?」
「ああ。太平のため、やむなしと。もう今日は遅いが、娘と一度対面したいとも仰っていた。すぐ呼びに来るだろう」
すると、ちょうどそんな話をしている時に、小早川側の小姓が部屋に現れる。礼儀正しくお辞儀すると、彼はあき――秀俊に目を向けた。山口は頷くと、彼に訊ねる。
「隆景様が、お呼びか?」
「はい。初めて親子として対面する故、秀俊様お一人とじっくりお話がしたいと」
「そうか。秀俊様、隆景様は秀吉様も一目置く優れたお方です。気を張らずに向かわれるとよろしいでしょう」
山口に促されて、あきは立ち上がる。小姓はあきとさして年も違わないが、大人と変わらず案内の勤めに励んでいた。
あきが部屋を出てしばらく、山口は、今までより小さな声で切り出した。
「さて、これでひとまずは丸く収まった。半年も過ごせば、秀俊様の事など皆忘れるだろう」
「娘っこの今後については、隆景様に話したのかい? こちらで勝手に逃がしてやっては、向こうの顔が立たないだろう」