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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
「逃がす? 何を寝ぼけておる、頼勝」
山口の冷徹な視線に、頼勝は緩んでいた顔を険しくする。
「おい、まさか爺さん、あの娘っこも殺す気か!?」
「当然だ。逃がしてしまえば、いつこの話が表に出るか分からん。秀俊様を殺害した連中も、娘が自由の身になれば狙いに来るだろう。真実を吐かせ、世に知らしめるためにな」
「だからって、そんな……」
「我らは誰の家臣だ、頼勝。小早川家に入ったとはいえ、豊臣の将よ。半年もあれば、小早川を乗っ取る事など容易、隆景とて、それを承知で貧乏くじを引いたのだからな。文句は言わせぬ、顔色を窺う必要もない。我らだけで、家中を動かすのだ」
「しかしだな、家中を動かすのだって、秀俊という世継ぎがいるからこそだぞ? 半年やそこらで、そこまで自由に出来るほど潜れるかね。最悪、秀俊様が死んだから、毛利一門の中から世継ぎを養子として取り直す、なんて話にもなるかもしれん」
「その辺りは、流れよ。半年で無理なら、一年でも二年でも待てば良い。どの道、下賤な出の娘に政が出来る訳でもない。家を動かしていくのは、我らになるのだ」