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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
 
 頼勝は厳しい顔をするが、山口も譲らない。しばらく睨み合いが続くと、正成が手を叩き仲裁に入った。

「お二人とも、落ち着いてください。何はともあれ、まずは乗り切った事を喜んではいかがですか? 明日からの宴には、数え切れないくらいの来賓があるでしょう。皆にからくりが知れぬよう、気を配らねばならないのですから」

「むう……」

「……分かったよ、そりゃそうだ。明日ばれちまえば、半年後がどうこう言っている場合じゃないからな」

 諍いは収まり、空気は穏やかに戻る。静かになれば、三人の頭には同時にあきを思い浮かべる。一体、隆景は彼女へ何を話しているのか。気にならずにはいられなかった。

 そして、まさか自分が殺されるか否かなどという話が行われていると知らないあきは、通された部屋で隆景を待っていた。人払いをしたのか、案内役の小姓も下がっている。だがなかなか隆景は現れず、一人の時は続いた。

 男として振る舞わねばならぬのだから、あきは待つ間もしっかりと拳を膝の上に置いていた。荒唐無稽な話であるが、引き受けた以上手は抜けない。一つ間違えれば、戦の火種になるかもしれないのだ。あきに気を緩める時間はなかった。
 
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