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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
 
「そんな事、言っていいんですか? それではまるで、太閤様が死ぬのを待っているかのように聞こえますが……」

「向こうの耳に入らなければ、言わなかったのと同じ事ですよ。あなたは、真面目な人間なのですね」

 隆景はあきの頭を撫でながら、耳を傾ける。両親の記憶はないに等しい上、叔父夫婦には、頭を撫でられた事など一度もない。初めての愛情のこもった触れ合いに、あきは胸の内がくすぐったくなった。

「あきさんは、どこの国からやってきたのですか?」

「備前です。そこで、秀俊様の暗殺現場を見て……山口様に、連れてこられました」

「そうですか……先程、自分がいなくなって困る者はないと言いましたが、ご両親は他界なさっているのですか?」

「はい。小さい頃に亡くなりました」

 隆景はそれを聞くと、あきの頭から手を離す。そして代わりに手を握ると、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

「明日からは、私が義父です。秀俊としてはもちろん、あきとしても頼りなさい。私は、心からあなたの父となりましょう」

「でも……私は、秀俊として生きるために来たんじゃ」
 
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