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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
豊臣の流れに負けず栄える毛利一門の宴は、まさしく贅を尽くしたものだった。見るのも食べるのも初めての鮑や、次々運ばれる酒。だがあきの目を引いたのは、『秀俊』の隣に座らされた少女だった。
彼女は、毛利家の当主である輝元の養女。秀俊が小早川家の当主を継げば、自ずと毛利との縁は薄くなってしまう。それを繋ぎ止めるための、政略結婚として彼女が送られてきたのだ。
秀俊が毛利へ恩を感じるようにと、妻となる彼女は整った顔をしていた。男ならば、位の高い毛利と縁が繋がる上に、美人を娶れて幸せと思うだろう。だが、あきは女。その美しさに、なんの有り難みもなかった。
(いいな……綺麗な格好出来て)
むしろあきが抱いたのは、羨望であった。おしろいと紅をつけた彼女は、女としての人生を満喫している。白無垢はそんな彼女をさらに飾り立て、他にない宝物のように見せていた。
「秀俊様は、先程からずっと奥方様を見つめていらっしゃる。夫婦仲が良き事は、優れた家の基本ですぞ」
誰とも知れぬ武士に声を掛けられ、あきは笑みを浮かべ頷く。山口から、喋らなくてもいいから、とにかく愛想良く相槌を打てと言われていたのだ。