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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
あきには二人の掛け合いが冗談なのか本気なのか分からないままであったが、とりあえず山口が醸し出していた険悪な空気は晴れていた。和やかになった評定が終わると、隆景はあきを引き止め先に山口達を帰らせた。
「さて、そういう訳で、しばらくは伏見で暮らす事になります。伏見には秀俊を知る者も多く、より身辺を気にしなければならないでしょうが……亀山に籠もられては、私もあなたを助ける事が出来ません。致し方がないでしょう」
「えっ、と……あの、そもそも、亀山とか名島とか、仰る事のほとんどが私には分からないのですが」
「分からないのであれば、分かるまで私に聞きなさい。これから秀俊を演じるにおいて、あまり家老に頼りすぎてはいけません。大変だとは思いますが、自分で領地を動かせるほどの知識を身に付けてください」
「え? でも私が政を覚えても、口を挟む立場ではないのでは」
「知識は、あって困るものではありません。時にはそれが、命を守る事もあります。己の目で、信用出来る者とそうでない者を見極めなさい。あなたを利用し陥れようと企む者は、外だけにいるとは限りません」