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第2章 小早川隆景という男

　
「それは、その……、なんだか、気恥ずかしくて。叔父夫婦は、どこか他人行儀なところがありましたから、隆景様は、生まれて初めて出来た父なんです」

「一度呼んでしまえば、吹っ切れて慣れますよ」

「そういうものでしょうか……」

「ああ、でもそういえば、私も誰かに父と呼ばれるのは初めてかもしれません」

　隆景は手を叩くと、記憶を掘り返す。だが、隆景は実子こそないものの、秀俊を迎える前は他に養子がいたはずだ。あきが首を傾げれば、隆景はその疑問を察し答えた。

「養子だった秀包は、実際は私の弟ですから。確かに親子ほど年の離れた兄弟ではありますが、純粋な親子とも違うものです。父ではありますが、兄でもあり……言ってしまえば、とにかく大事な家族といったところですね」

　なんとも曖昧な関係ではあるが、年の離れた兄弟には、複雑なものがあるのだろう。兄弟のいないあきには、その辺りの機微は分からない。しかし大事な家族だと言い切れるのだから、おそらく彼らの関係は良好なのだろう。

「私は……そんな隆景様と秀包様の間に割って入って、良かったんでしょうか」