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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行
めったにかけない手間を掛けてまで書いたのだと思えば、あきは手紙がさらに有り難く感じる。そして、早くそれを読み解きたいと思った。
「まあ、政に関しては祐筆で充分とはいえ、いざという時に備えて文字は覚えとかなきゃならんだろ。なあ山口殿、せっかくいい素材もあるんだ、文字を教えてやってもいいだろう?」
頼勝が訊ねれば、山口は眉間に皺を寄せる。文字を教えてほしいと願うあきの向上心には、山口も文句はない。だが問題は、教材となる隆景の手紙の長さであった。
「……では頼勝、文字に関しては、お前に一任しよう。しっかり教えるのだぞ」
「え、俺ですか!? いや、こういうのは、爺さんや正成の方が、得意でしょう?」
頼勝がためらうのも、やはり手紙の長さである。いくら文字が綺麗でも、あの長さのものを解決するには骨が折れる。山口が頼勝へ仕事を押しつけるのも、無理はない事だった。
「私は秀俊様の武士として剣の立ち振る舞いを教える役目があります。山口殿の負担は論じるまでもなく、でしたら頼勝殿が文字を教えるのは、妥当な役割分担ではありませんか?」