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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

早まる心臓はあきに何かを訴える。何かは分からないが、あきは衝動のままに呟いた。
「……お父様」
「!」
「あの……なので、文は続けてください」
すると隆景はあきの手を引き、胸の中にあきを収める。体中に感じる温もりと、柔らかい隆景の匂い。それはますます、あきを熱くした。
「ありがとう、可愛い私の娘」
「お父様……」
「では、返事を楽しみにしています。しかし、まずは今日の宴ですね。官兵衛が来ていますから、さらに皆励むでしょう。楽しんでくださいね」
隆景が身を離せば、あきは寂しさを覚える。もう少し触れ合っていたかった。そう思うのも親愛だろうかと、あきは内心で首を傾げる。しかし答えが出るまで、時は待ってくれない。始まる宴に、足を進めなければならなかった。
如水が加わっても、宴は滞りなく進む。だが、連日続く宴も、そろそろ終わりを迎えようとしている。隆景も秀俊も、己の領地を治める主である。騒いでばかりはいられない、日常へ戻らなければならないのだ。
だが、事件は日常へ戻る前、宴の晩に起こる。それはあきが、隆景の元へ向かおうと廊下を歩いていた時に起こった。

