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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差
あきは秀俊と同い年、となれば女として成長していても、男の狂気を知る体ではない。山口も、これには同情を感じていた。
「おいたわしや、秀俊様。御身が無事だったのが、不幸中の幸いか」
「そうですね……しかし、敵が紛れ込んでいる以上、ここに留まるのは危険です。宴を切り上げ、伏見の屋敷に戻りましょう」
「それが最善ですな。夜明けには出立出来るよう、準備しましょう」
「いえ、夜中の内に出ましょう。細かな荷物は、追って私が送らせます。あなた方は、まずは一刻も早く離れてください」
「しかし、向こうもまだ娘を狙っているというのに、夜中に飛び出しては思うつぼでは?」
「不審者は、こちらの方で足止めします。ですからあなた方は、あきさんの身の安全だけを考えてください」
「足止めと言っても、誰が敵かも分からないのに止められるのですか?」
城の中に紛れた者、外に隠れた者、山賊まがいで山に潜む者もいるかもしれない。それらを全て隆景が止められるとは、山口には信じがたかった。
だが、隆景は真っ直ぐ山口を見据え譲ろうとしない。その目を見ていると、疑心が揺れ始めた。