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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差
 
「……私」

 するとあきが、ぽつりと呟く。二人が身構えると、あきは怯え縮こまった。

「帰りたい……伏見なんて、知らないところに行きたくない……」

「あきさん……」

 あきにとっての故郷は、安芸でも京でもない。備前の地を心に描き、涙をこぼす。傷付いた少女を見れば、隆景はもちろん、山口とて帰してやりたい気分になる。だが決して、その弱音に頷く訳にはいかなかった。

「……伏見の屋敷ならば、人の目があります。各地の大名が同じく屋敷を構えていますから、下手な事をすればすぐ目撃されるでしょう。なおかつ、屋敷の中にはそうそう干渉されません。それぞれの家の事情があると、皆知っていますから。今は伏見が、一番安全なのです」

「そんなの、分かってます。けど……」

「あなたに全ての責務を負わせてしまうのは、心苦しく思います。ですが今は、耐え忍んでくれませんか」

 隆景はあきを落ち着かせようと、背中をさすりながら説得する。だがあきからすれば、その手が一番乱れる原因だった。

 甘え、寄りかかりたいその手に委ねようとすれば、頭に過ぎる血の匂い。隆景は、返り血も浴びたままである。
 
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