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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差

秀俊の人生は充分に聞いてきたつもりではあるが、そうも言い切られると、あきには疑問が生まれる。いくら複雑な環境と言っても、秀俊は武家なのだ。生きるだけで精一杯の農民に比べれば、友と遊ぶ間の一つや二つは生まれるはずだ。
「手紙とかは、残ってないんですか?」
「公的な手紙は、基本的に読んだら焼くようにしております。私的な物なら、部屋を探せば見つかるかも分かりませんが」
すると山口は懐から手紙を取り出す。が、それは一枚ではなく、何十数枚も纏めたような分厚さだった。
「手紙といえば、つい先程隆景殿からの手紙を預かりましたぞ。どうやら、拙者達が出てすぐに書いたようですな」
隆景の名を聞くと、心臓が跳ねる。読みたいような、読みたくないような、しかしあきは、結局それを大人しく受け取った。
「隆景殿も追って伏見にいらっしゃる。それまで、問題のないように」
山口に釘を刺されて、あきは秀俊の部屋まで戻る。そしてあきは戻ってすぐ、手がかりを求め部屋の中を探し出した。
部屋は侍女達の手により綺麗に片付けられていて、あまり人間らしい痕跡がない。

