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おんな小早川秀秋
第1章 乱世の匂い
 
 そこで隆景は、一計を案じた。毛利本家と同じく、小早川家にも実子がいない。それを利用して、隆景は自分が秀俊を貰い受けたいと申し出たのだ。

 毛利本家ではないが、小早川隆景は秀吉も一目置く実力者。それが豊臣に組み込まれるなら、秀吉も本望である。こうして秀俊は、秀吉から小早川家の養子となるため、安芸へと向かったのだ。

「だが……もしここで、秀俊様が死んだらどうなる? いくらいらなくなった養子とはいえ、ないがしろに扱ったとなれば秀吉様がお怒りになられるのは当然だ。そして秀吉様が毛利に罰を与えようとすれば、必ず毛利は抵抗するはずだ」

 大国である二つの勢力が争えば、勝敗はどちらであろうとも世は乱れる。その隙を付いて、一旗揚げようと企む者も必ず現れるだろう。秀俊として安芸に向かえとは、あまりに信じがたい、しかし冗談ではなく本気の訴えであった。

「おそらく、秀俊様を狙ったのは乱世に戻ってほしい連中の刺客だ。もし秀俊様の死が広まれば、連中の狙い通り戦が起こる。だが毛利はもちろん、大概の家は唐入りで疲弊している。こんな時に大戦となれば、日本そのものが枯れてしまう」
 
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