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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差

しかし、戦は待ってはくれません。兄が死んだその後も、変わらずに毛利の戦いは続きます。働き盛りの兄を失い、後継者である兄の子、輝元はまだ幼く、父は高齢。足元が不安ではありますが、幸い父がまだ無病息災であったため、大丈夫だろうと踏んでいました。
ですが、大丈夫、などという見方は、すぐに覆されました。兄が死んだ途端、商人が金子や兵糧の提供を渋り始めたのです。
戦をするのに一番必要なものは何か。私はこの時まで、それは勇敢な人材や、犠牲を減らすための策謀の類だと思っていました。しかし、それは大いなる間違いです。勇気も、知恵も、それを発揮する土壌を整えなければ発揮できません。そしてそれに必要なのは、金なのです。
では、その金を生み出すには何をすればいいのか。恫喝すれば、反発を受け一揆を起こされたり、敵方に寝返ってしまいます。媚びるだけでは足元を見られ、かえって金を吸い取られてしまいます。
脅しでもへつらいでもなく、人に力を貸してもらうためには、心から信頼を得ていなければなりません。兄は、毛利の中で誰よりも、人から信頼される誠実な男だったのです。

