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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差
 
 また、残された手紙には、私の知らない兄が克明に書き記されていました。

 毛利は父により広がったもの、才覚のない自分が潰すのは必定である。今の繁栄も、蝋燭が消える直前強く燃え上がるのと同じ事。賢臣もなく、現世で楽しい事など一つもない。来世だけが、希望である――

 それは、兄が腹の内に隠した弱さをぶちまけた手紙でした。ここには全てを書き記せませんが、希望の芽をぶちぶちと摘み取りながら、重い足取りで冷たい水の底へ向かうような、静かに沈む兄の苦悩がつらつらと綴られていました。

 兄は私の前で、そんな弱音を吐いた事は一度もありませんでした。確かに兄はよく父と比べられ、父には劣ると陰口を叩かれる事もありました。しかしそれを聞いても、父は偉大なのだから当然で、自分は父を支えるだけだと笑うばかりだったのです。

 ましてや、時には父を叱責し、戦へ奮い立たせるような人でした。それが心の内でこんなにも苦悩しているとは、誰が予測出来たでしょうか。いえ、出来なかったから、兄は苦悩したのでしょう。兄を芯から気遣い心に寄り添っていた者は、一人もいなかったのです。
 
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