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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
 
「どうだ、秀俊。拾は、ますます健やかに育っているだろう」

「は、はい」

 拾と呼ばれた赤子は、あきが見た事のある赤子の誰よりも大きく、輝いた目をしている。健やかかと聞かれれば、間違いなく健やかだった。

「可愛らしいだろう、つい昨日の話なのだが、拾がな――」

 太閤秀吉と言われている男は、ひょうきんな笑顔を浮かべ、延々と赤子の話を語る。息子の自慢を語る父の姿は微笑ましいが、あきは相槌を打ちながらも、疑問を隠しきれなかった。

(私……何のために呼ばれたんだろう)

 わざわざ呼び出しているのだから、何か大事な用があるはずだ。忙しい天下人が、いつまでも世間話をしていいとも思えない。が、せっかく話が弾んでいるところに、水を差して機嫌を損ねても困る。あきが三成にどうするべきか視線を送れば、三成が口を開いた。

「秀吉様は、お前が新たな父の元で、苦労がないかお気にかけてくださっている。隆景殿は、どうだった」

「は、はい。お父様はとても聡明で、私の知らない事をたくさん教えてくださいました。苦労なんてとんでもありません。私――秀俊は、幸せ者です」
 
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