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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
 
 すると秀吉は笑みを深め、拾をあやしながら頷いた。

「そうか、隆景は出来た男だからな。色々学ぶといい。お主は未来、拾に頭を垂れる人間なのだからな」

 それだけ言うと秀吉は立ち上がり、奥へと引っ込んでしまう。三成も平然と見送るが、結局秀吉が何をしたかったのか、あきには分からない。

「あの、石田様――」

「お前の方が立場は上だ、様などと呼ぶな」

 明らかに年上の成人した男に対し、まだ元服まもない、子どもの影を残したあきが上から話すなど、村の中では考えられない失礼である。だが、注意された以上、影武者としては果たさなければならない。もう一度口を開こうとすれば、三成は立ち上がった。

「話があるのならば、別室へ。人払いをさせる」

 歩き出す三成を、あきは慌てて追いかける。そして人の出入りがあまりなさそうな小さな部屋へ移動すると、三成はぽつりと呟いた。

「今日は、かえって影武者の方で良かったかも分からんな」

「あの、石田殿。私は一体、何のために呼ばれたのですか?」

 秀俊を心配している、と言う割に、秀吉はこちらへ目もくれようとしない。ただ赤子の自慢話を聞かされただけで、何か命じられる訳でもない。不自然極まりなかった。
 
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