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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
「あの方は、我が子の障害を全て排除しようと動いている。今回養子に出した事で恨みを買い、反感――あるいはそこまで行かずとも、不信や不安を少しでも覚えれば、それは将来遺恨に育つ。金吾が『どちら』なのか、見極めたかったのだろう」
「しかし、ほとんど私、何も話していませんが」
「あの方の洞察力は、恐ろしい程鋭い。話をせず、ろくに顔を向けない振りをしても、態度を観察されていた。まあ、お前は影武者だ、豊家へ遺恨があるはずもない。秀吉様も、小早川を障害だとは思わなかっただろう」
ただ訳も分からず聞いていただけで、明暗を分けていたのかと知ればあきは背中に寒気が走り鳥肌が立つ。うかつに物も話せないと、あきは喉から出そうになった言葉を飲み込んだ。
洞察力が鋭いと言う割に、秀俊が影武者だと気付かなかったのはどうしてか。抱いた疑問の答えを、あきは感づいている。秀俊という存在自体には興味がなく、その存在が害か無害かだけを判断していたからだろう。
三成に訊ねても、それは不確定を確定に変えるだけで、何かが劇的に変化するわけではない。好奇心を満たすだけならば、黙っていても同じだった。
「だが、いつまでも影武者が通用する訳ではない。早く本物を見つけ出し、戻るよう伝えろ」