この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
ひとまずあきが口を閉じれば、三成は咳払いして仕切り直す。
「何か勘違いしているようだが、俺は金吾と親しい訳ではない。先程も言ったが、奴は俺を前にすると目を逸らし、いつも逃げだそうとしていたんだぞ」
「しかし……秀俊様が、日常をどう過ごされていたのか、手掛かりがあまりなくて。これでは、小早川家の皆様にご迷惑を掛けてしまいます」
務めを果たそうと必死なあきに、三成は頭を掻く。そして溜め息を漏らすと、冷たい声で言い放った。
「俺が知っているのは、あくまで俺から見た金吾だけだ。奴が他でどんな振る舞いをしていたかは知らん、責任は持てないぞ」
「え……?」
「俺は忙しいんだ、今日付き合ってやる暇はない。そんなに熱心に知りたいと思うなら、いつ俺が赴いても話が出来るよう、時間を空けておけ」
三成はそう言うと立ち上がり、先に部屋を出て行ってしまう。あきはしばらく目を丸くしていたが、よくよく言葉を反芻してみれば、それは悪い返事ではないと気付いた。
(忙しいのに、間を縫って来てくれる……の、かな? それならそうと、言ってくれればいいのに)