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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
良くも悪くも、印象に残る男。あきの心には、その存在がいつまでも残った。
屋敷へ戻った後も、なんとなく意表を突かれた驚きは残る。あきは何かしなければ落ち着かなくて、筆を取り紙を広げた。
(手紙……書こう。今なら、書けそうな気がする)
石田三成に影武者だと知られた事も、どの道報告しなければならない。一度墨を乗せてしまえば、後は勝手に手が動いた。
『お父様、お返事がおくれてしまって申し訳ありません。お父様のおきもちを思うと胸がはりさけそうになり、このおもいをどう表すべきか分からなかったのです。
隆元様の人となり、私はお父様に聞いた全てしか知りませんから、けんとうちがいの事を感じているかもしれません。しかし私はお話を聞いて、隆元様はお父様によく似た性分の方だったのだろうと思いました』
隆元という人は、己の嘆き悲しみを一切外へは出さなかった人間だ。そして隆景もまた、そんな兄を失った悲しみを表に出さず、毛利を支えようと立ち続けている。
隆景自身は、隆元には遠く及ばないと思っているようだった。だが、あきは二人とも同じだと感じたのだ。