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ブルジョアの愛人
第12章 初夏の蕾
優々は柔らかい水色のクッションを抱きしめ、赤らむ顔を隠す。その何とも愛らしい仕草は、まだ自らが持つ優々と同種のマイノリティに気づいていない真緒の心を切ないぐらいくすぐった。
「明るくて…優しくて…ムードメーカーで…」
真緒は頭の中にクラスメイトの顔を思い浮かべる。1組の男子はうるさいのばかりだ。だが優しいともなれば大分絞られてくる。
「岩倉?」
優々は首を横に振った。確かに岩倉くんは優しいが、その優しさを必死に隠すようにどきどきクラスメイトにひどい罵詈雑言を浴びせることがあるから少し苦手だ。
「うーん、牧原くん?」
ドキリとした。牧原くんは、優々が去年まで好きだった男の子だ。真緒はひるんでしまったのが正解のサインだと思ったらしく、自分から訊いたのにまたどこか思いは複雑だった。
「ち、違うって! 本当に違うよ、昔ちょっと気になってただけで、今好きなのは別の人だもん」
優々は両手を突き出して必死に否定する。まるで勘違いされることを恐れているかのような反応だ。
「本当に違うの?」
「うん…」
「じゃあ…」
真緒がまた考えるそぶりを見せたとき、階下から絵里加の声がした。
「お風呂でゆっくり話そうか」
優々は耳まで真っ赤にして頷いた。