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ブルジョアの愛人
第13章 梅雨冷えとカーディガン
大塚はといえば、近頃樹里が教室の隅で小さくなっていることが気掛かりである。
歴代の彼女に必ずといっていいほど鈍感だ鈍感だと言われていた大塚であったが、さすがにあれだけ威張っていた樹里がいきなり莉菜のようになるのだから気になる。それに、彼女には弱みを握られているのだ。
樹里と形だけ付き合い始めてから一ヶ月近く経つが、未だに学校の外で逢ったりなどしていない。
あちらから誘われることがそもそもないのだ。だからといって自分から誘わないのが大塚である。
莉菜が最後に登校した日から一週間が過ぎたが、あれからクラス内でいじめは起きていない、と思う。
断言できないのは、本当に自宅謹慎をしていた彼女らが改心したのかはっきりと分からないからと、樹里の様子がおかしいからだ。
しかし樹里が以前のようにクラスメイトとつるんでいないからといって、彼女はいじめられているといえるのかどうかも分からない。
だが樹里の方からクラスメイトと距離をとっているようには見えないのだ。だとするとやはり。
「先生、それ、何の図ですか」
雲の様子と天気の移り変わりについてまとめていた黒板には、白い線が一本めちゃくちゃに蛇行していた。